“インプラント”が保険適用になりました
今回承認されたインプラントは「シリコンジェルのラウンド型」。
手術は認証を取得した医療機関でのみ受けられます
厚生労働省中央社会保険医療協議会(中医協)は2013年6月12日、乳房再建手術に使用するラウンド型シリコンインプラント(人工乳房)の保険適用を承認し、7月1日からその適用が開始されました。次いで11月29日にはより自然な形状をもつアナトミカル型シリコンインプラントの保険適用も承認され、2014年1月8日からその適用が始まりました。
保険適用の承認まで乳房再建手術を待っていた患者さんにとっても、これはとても大きな朗報です。ただ今回のインプラント保険適用の概要についてはまだ十分に理解されていないことも多く、手術を考えるにあたって患者さんが注意すべきことをまとめてみました。
監修:日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会理事
医療法人社団ブレストサージャリークリニック院長 岩平佳子
《はじめに》保険適用対象の手術にはいろいろな制約があります
これまでインプラントによる乳房再建手術を受ける患者さんは、保険がきかない自由診療となるため、片側で60万円から100万円程度の手術費用を全額自己負担せねばなりませんでした。
今回、厚生労働省が「乳房再建手術は乳がん治療の一環」であり、乳房再建のためのインプラント使用は「美容整形目的とは異なる」と判断したことで保険適用への道が開かれ、患者さんの経済的負担が大きく軽減されることになりました。これは、保険適用を求めて長らく熱心な署名活動を続けてきた患者さんたちの努力の賜物でもあります。
ただ注意しなくてはならないのは、新たに認定を受けた医療機関でなければ保険適用対象の手術を行うことができないことと、保険適用対象となるのは限られた種類のシリコンインプラントとティッシュエキスパンダーであるということです。
また保険適用となるのは、乳がんの「全摘出手術後」の乳房再建でインプラントを用いるケースに限られています。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが受けたことで注目を集めた、予防のための乳房切除に伴う再建手術などは適用の対象外です。
1.認定を受けた医療機関だけが保険適用の乳房再建手術を行います
今回の制度化によって、保険適用となる再建手術を行えるのは、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が一定の要件に基づいて「実施施設」としての認定を与えた医療機関に限られることになりました。認定の要件は、一定の認定講習会を受講した乳腺外科医と形成外科医の双方が勤務する医療機関であることです。
2012年9月、乳房再建用のインプラントとティッシュエキスパンダーが厚生労働省によって薬事承認を受けました。その際、これらの製品の保険適用承認の条件として求められたのが、「十分な知識と経験を有する医師によって、体制の整った医療機関でこれらが使用されるような措置を講じる」ことで、医療機関の認定制度はこうした背景から誕生したものです。
現在認定を取得した実施施設の一覧は、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会のウェブサイトに掲載されています。
現在、認定を申請中の医療機関は多数ありますので、この数は次第に増えていくものと思われます。保険適用による乳房再建を考えている方は、新しい情報を確認されることをお勧めします。
《参考資料》