「たくさんの“キャンサーギフト”をいただいて」
東京都 K.Cさん(38歳)
手術方式 : 「一次一期再建」(穿通枝皮弁 乳がん手術と同時に再建)
・乳がん手術 : 2011年8月 両側の皮下乳腺全摘出と同時に自家組織(穿通枝皮弁)による再建
執刀・横浜市立大学付属市民総合医療センター 石川孝医師
・乳房再建手術 : 2011年8月
執刀・横浜市立大学付属市民総合医療センター 佐武利彦医師
術前治療 : 術前抗がん剤治療(タキソテールとFECを約半年間投与)
術後治療 : ホルモン療法中(ノルバデックス5年、リュープリン3年)
良性のはずが悪性。まさかの両側。抗がん剤治療へ・・・
第二子への授乳が終了して1年ほど経ったころ、右乳房が固く大きく腫れ上がり、乳腺炎かと思って乳腺専門クリニックで診察を受けたところ、針生検で良性との診断を受けました。「念のため1カ月ごとに検査をしましょう」といわれたのですが、“良性”の一言に安堵してしまい、そのまま放置。ただ腫れがひかないので民間の温熱療法を受けるうちに、患部がかさぶた状になり、乳首ではないところにできた穴から白い分泌物がたくさん出てようやく腫れが治まりました。
小さなしこりが残り気になりつつも、このまま民間療法で治そうと思っていたところ、その年の健康診断で再検査となり、大きな病院を紹介され精密検査で悪性とわかりました。告知を受けたときは独りでしたが、「やっぱりそうか」と冷静に受け止めることができ、すぐに気持ちを切り替え「闘おう!」と決心しました。
治療はセカンドオピニオンを受けた病院に決め、すぐ主治医から「リンパ節の腫れ(転移)もあり、左乳房にも放っておけない石灰化がある」と言われました。針生検の結果、左胸も悪性と判明。リンパ節に飛んでいれば全身にも転移の可能性ありということで、全身治療である術前化学療法(抗がん剤)を勧められました。「腫瘍が小さくなれば温存手術が可能かもしれない」ということでもありました。
きれいに作っていただいたおっぱいがとてもいとおしい!
乳がんとわかってすぐ、知り合いの紹介で横浜市立大学付属市民総合医療センターの佐武先生の執刀で自家組織による乳房再建をした方の胸を実際に見せてもらう機会がありました。そのときは乳がんを治すことで頭がいっぱいでしたが、とても自然で温かいおっぱいに感動して、「おっぱいは取り戻せるんだ!」と勇気と希望をいただいた思いがしました。
抗がん剤治療が終盤を迎え、手術についての相談をした際、主治医から「腫瘍はほとんど消滅したが、年齢と広がりがあったことを考えると、温存ではないほうがいい。両側乳房全摘出してエキスパンダーまで入れてあげるから、インプラントによる一期再建を考えてみたら?」と提案されました。「再建」という言葉に佐武先生のことが頭によぎり、「再建なら自家組織で行いたい」という希望を伝えたところ、快く佐武先生に紹介状を書いてくださり、抗がん剤治療終了後の2011年の夏に転院。両胸の一次再建手術を受けました。
手術から1年が経過し、リンパ節郭清による両脇の下と乳房に感覚の麻痺や、脂肪を摘出したお腹の突っ張りは残っていますが、日常生活ではほとんど気になりません。それよりも、きれいなおっぱいをつくっていただけたことが本当に嬉しくて、いまは自分のおっぱいがいとおしくてなりません。
家族や友人、たくさんの人に支えられて――
当時7歳だった上の娘にも、「ママ、おっぱいの病気を頑張って治すからね!」とオープンに話しましたので、抗がん剤で髪の毛が抜けたことも理解してくれていました。乳がんと聞いてショックを受けていた夫も、インターネットなどで積極的に情報収集をして、手術のことなども一緒に考えてくれましたし、まさに家族みんなで病気を乗り切ったという思いです。
いま改めて振り返ると、抗がん剤治療や自家組織による手術で入院日数もかかりましたが、2人の子どもたちのことでは自分の母や夫の両親、近所のお母さん方に助けられ、支えてもらって本当に心強く感じたこと。また、夫とあまりうまくいっていない時期の発病だったのですが、夫が「僕とのことも病気の一因だったかもしれないね」と言葉をかけてくれ、それから夫婦で向き合えるようになったこと――。いろいろなことを経て自分を見つめなおすことができ、乳がんには“なるべくしてなった”という思いがあります。何より、たくさんのキャンサーギフトをいただいて、いまは感謝の気持ちでいっぱいです。
これから再建手術を考える人には、ポジティブな考えを持っているサバイバーの方にたくさん会ってほしいと思います。みなさんとても元気で溌剌としていて、きっとたくさんのいいパワーをもらえるはず。私もそんな一人になれたらと考えています。
*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。
(取材:2012年8月)