患者さんが、満足・納得できる手術を受けるため一緒に考えていきます
冨田祥一(とみたしょういち)
がん・感染症センター 東京都立駒込病院 形成再建外科 医長
術式:
・自家組織(穿通枝皮弁 ドナーは腹部が中心、広背筋皮弁、広背筋皮弁+脂肪注入)
・インプラント
標準手術時間:
・自家組織 穿通枝皮弁 5時間、広背筋皮弁 3時間、広背筋皮弁+脂肪注入 3〜4時間
・エキスパンダー挿入 1時間
・インプラントへの入れ替え1時間
標準入院日数:
・自家組織:7~10日間
・インプラント:一次再建の場合約7日間、二次再建の場合3~4日間
乳頭・乳輪再建の時期:
・自家組織:乳頭のみ術後3カ月
・インプラント:乳頭のみエキスパンダーからの入れ替え時に実施
※乳輪は乳頭完成後タトゥーで実施
患者さんはもちろん、周りの家族も幸せにする乳房再建術
形成外科医を志したのは学生時代に遡ります。指導医のひとつひとつの手技から生み出される、その造形の美しさに圧倒されました。形成外科は徹底的に“見た目で勝負する”ところに独自性があり、“手術跡”としての言い訳が許されず、厳しさとともにやりがいを感じています。
形成外科医として乳房再建を手掛けるようになった2012年、忘れられない患者さんとの出会いがありました。乳房再建を終えたその患者さんは、小さなお子さんと一緒に診療に来られ「これで今後はTシャツを着ることなく子どもと一緒にお風呂に入れます。この子のために再建して本当に良かった」と嬉しそうにおっしゃったのです。乳房再建は患者さんご自身のためであることはもちろんですが、まわりのご家族も幸せにすることを改めて実感し、乳房再建医の道を究めようと決心するきっかけになりました。
乳房再建術はすばらしい手術ですが、乳房を摘出された患者さんすべてが受けるべき、とは考えていません。患者さんご自身が納得して選択・判断することが何よりも大事です。失った乳房を取り戻すことで気持ちが明るくなり患者さんのQOL(生活の質)が向上する、そうしたことが、乳がん治療に前向きに取り組む原動力となれば、と考えています。
日本屈指の乳房再建実績を誇る医療機関として、チーム医療を実践
都立駒込病院は、乳房再建を40年前から手掛けるパイオニアです。「乳房再建は心の再建」という考えのもと、できる限りの選択肢を示すよう心がけており、患者さんのご要望があれば、放射線照射など局所進行乳がんの治療と並行して乳房再建を行うこともあります。もちろん乳房再建手術が乳がん治療に影響を与えないことを十分確認し、合併症リスクなどもしっかり説明したうえで再建を行いますが、結果として乳房を再建することが乳がん治療と向き合う患者さんの気持ちを支えることも多くあると感じています。
また、他院に比べ、乳房温存よりも全摘手術をする患者さんの割合が多いのも特徴です。長年にわたる乳腺外科と形成外科の連携により、乳房温存ができるケースであっても、放射線照射や再発リスクなどを複合的に考慮したうえで、「全摘+乳房再建」という選択肢を初期段階から提示することが多く、結果として一次一期での乳房再建術も多くなっています。
提供する情報の中から患者自身が納得して決めたことが、最良の術式になる
乳房再建には多くの選択肢があります。また、医療機関ごとに提案される術式に違いが生じたり、未対応の術式がある場合もあります。医療を提供する側が可能性を狭めることなく、できるだけ多くの選択肢を、正確な情報とともにお伝えすることが大切だと考えています。
インプラント・自家組織を問わず、整容性の面から脂肪注入の併用を提案したり、背面を切開せずに広背筋をドナーとして使う術式を取り入れるなど、患者さんの適用に応じて、より美しく、より低侵襲な乳房再建を目指し、日々研鑽しています。
先にお伝えしたとおり乳がん手術と同時に行う一次一期での乳房再建術も多いので、長期間にわたって術式を検討することができない場合もあります。それでも基本的には手術前に最低2回は外来でお話するようにしていますし、初回の外来では1時間近く時間をかけてそれぞれの選択肢を説明することもあります。私自身が患者さんに代わって術式を決めることはありませんので、患者さんの多くは迷われます。しかしこれまでの経験上、悩み抜いた結果、患者さん自身が決めた術式こそが、満足度・納得度ともに最善であると私は考えていますし、そのために必要な情報はできる限り提供させていただくようにしています。
(2022年4月 オンライン取材)
名称 | がん・感染症センター 東京都立駒込病院 | ||
---|---|---|---|
所在地 | 113-8677 東京都文京区本駒込3-18-22 | ||
診察時間 | 水曜午前(初診)※2022年4月現在の情報です。受診される際は病院に電話でご確認ください。 | ||
休診日 | 土・日・祝日、年末年始 | ||
TEL | 03-3823-2101(代) | ||
URL | https://www.tmhp.jp/komagome/section/geka/keisei/special/index.html |