• 公開日2022.07.31
  • 最終更新日 2024.01.17

乳房再建手術経験者の声

乳がんになった自分を責めないで。周囲のサポートを受け、乳房再建後の前向きな生活をイメージし、自分をありのまま受け容れてほしい

東京都 I.Hさん(47歳)

手術方式:「一次二期再建」
・乳がん手術
2021年7月 右乳房全摘手術
執刀 がん・感染症センター  東京都立駒込病院 外科(乳腺)有賀智之先生

・乳房再建手術
2021年7月 エキスパンダー挿入
2022年4月 広背筋皮弁法および脂肪注入により乳房再建
執刀 がん・感染症センター 東京都立駒込病院 形成再建外科 冨田祥一先生

・乳頭乳輪再建手術
2022年7月 乳頭乳輪再建(皮弁立ち上げ)
2022年秋頃 タトゥー仕上げ予定
執刀 がん・感染症センター 東京都立駒込病院 形成再建外科 冨田祥一先生

術前治療:なし
術後治療:なし

 

「なぜか、今、行かなきゃいけないような気がして」…受診した乳腺クリニックで、乳房再建を決意

2015年頃から健康診断のたびに高濃度乳房(デンスブレスト※)と石灰化を指摘され、その都度、超音波検査を受けても結果は異常なし…という状態が続いていました。しかし2020年の冬の検査では右乳房に不明瞭な影が確認され、乳がんの特徴である「集簇性石灰化の疑いあり」と言われました。ただ自覚症状も無かったので、しばらくそのままにしていました。

翌年の春、なぜかある日突然「次回の健康診断まで待たないほうがいい」「すぐに専門医の診察を受けたほうがいい」気がしたのです。すぐに自宅近くの乳腺クリニックで検査を受けたところ、乳がんと診断されました。クリニックの先生はとても親身になって乳がんとその治療方法ついて図解され、ありがたいことに乳房再建の可能性についても、治療方法と並行して丁寧に説明してくださいました。そのおかげもあり、その場で「乳房を全摘出することになったら、再建しよう」と心に決めていました。

※高濃度乳房(デンスブレスト)についてはこちら


術式について十分な比較検討ができた、一次二期での再建

2021年7月に東京都立駒込病院で乳腺外科の有賀先生執刀のもと乳がん手術を受け、右乳房全摘出と同時にエキスパンダーを挿入しました。乳房を再建する気持ちはすでに固まっていたので、もともとはお腹をドナーとする穿通枝皮弁での一次一期再建を望んでいたのですが、新型コロナウイルス感染症の影響による病院の方針もあり、一度退院後、一次二期での再建を目指すことに。

一方、この時の入院で思いがけない出会いもありました。背中をドナーにした広背筋皮弁法で乳房を再建した女性と同室になり、親しくなったのです。背中の傷跡と再建された乳房を見せてもらい、あまりのきれいさに驚きました。また、お腹をドナーとする場合、再建手術後3日間は仰向けの体勢のまま離床できないのですが、背中の場合は翌日から離床できると聞き、乳がん手術直後に一日中ベッドの上に居なければならないのが、とても辛かったので、その点も魅力に感じました。このように、術式についていろいろと見聞を広め、十分検討することができたので、結果的には一次二期再建で良かったと思っています。

2022年4月、形成再建外科の冨田先生執刀のもと、広背筋皮弁法と脂肪注入による乳房再建を行いました。施術ごとに先生がしっかりと説明を尽くしてくださり、自分でもよく考えて納得する選択ができたことで、心身ともに満足のいく乳房再建につながったと思っています。入院中も先生方や看護師の皆さんの献身的かつ心地よいサポートがありがたく、何一つ不安はありませんでした。

私の場合は、浸潤もリンパ節への転移も無かったので、術前術後ともに無治療で済んでいます。ただひとつだけ、乳がん手術の際にかけた全身麻酔が完全に体から抜けきるまでのまる2日間ほど、投与された痛み止めの副作用の影響か、これまで感じたことのない焦燥感に駆られ、精神状態が悪くなってしまったことがありました。2度目の再建手術の入院に際して、そのことを先生に伝えたところ、薬を変えるなど確実に対応をしてくださり、術前の安心につながりました。自分が不安に感じていることなどは、どんなことでもしっかり先生方に相談することは、とても大切なことですね。


周囲に支えられ、仕事を続けながら治療に専念

納得のいく手術ができたことで、再建後、まだ乳輪や乳頭のない状態の時でも、近所の銭湯や温泉に気兼ねなく出かけたりしていました。背中の傷も、以前ネコに引っかかれた時の傷よりも目立たないくらいで、皮膚が多少突っ張る感じはありますが、日常的には不自由を感じません。

高校3年生の息子には女性の体特有の病気について知っておいてほしいと、乳がんの診断を受けてから都度進捗は伝えるようにしています。ある日、息子が何かの記事で読んだらしく「乳がんは、世間で言われているほど死亡率は高くないらしい」と、私に言ってきました。ぶっきらぼうでしたが、息子なりに励ましてくれているのかな、と嬉しくなりました。

また、理解のある職場にも支えられました。私は不動産コンサルテイング会社でセミナーの企画などの仕事をしていますが、代表者と直属の上司(いずれも男性)には、正直に乳がんの手術と再建手術について相談し、2回の入院でそれぞれ2週間休暇を取得、術後数か月間はテレワーク主体での働き方に切り替えていただくことができました。ラッシュアワーの電車通勤は、不意に体を押されたりすることもあるので、特に手術直後は不安を感じることもあります。また、思った以上に体力が落ちていたので、しっかり体調を整えてから出社することができ、本当にありがたかったです。

男性の上司や同僚に治療の詳細を伝えるのは憚られるという意見も耳にしますが、相手が女性だからといって必ず望むような反応が得られるというわけでもないと思いますし、そこに男女差は無いのではないでしょうか。


乳がんになった自分を、決して責めないで

よく「出産・授乳経験のない女性は乳がんになりやすい」「西洋化した食生活や飲酒喫煙などの生活習慣が乳がんリスクを高める」などの情報を目にしますし、そのような情報が乳がん患者を追い詰めたり、ネガティブな影響を与えているようにも感じます。私自身も、母乳で子育てしたことでどこか大丈夫、と思っていたのは事実です。だから、ある日突然乳がんと診断され、そのような情報と自分を照らし合わせて悩んでいる人たちには、「乳がんにかかったのは、自分のせいじゃないよ」と言ってあげたいですね。自分を責めるのではなく、先生方や看護師さん、同じく乳がんの治療に取り組む仲間、家族や職場、友人など周囲の支えも得ながら、治療後の生活、乳房再建後の生活を前向きにイメージしてほしいです。

私自身も、以前は「自分さえ我慢すれば…」と思いがちで、なかなか自分の本心を表に出すことができずにいましたが、カウンセリングを専門的に学んだり、乳がん~乳房再建手術を経験したことで、自己受容の大切さに気付きました。今の自分をありのまま受け容れ、自分のことをもっと優しく、いたわっていい。そのことを、乳がんの治療や再建を悩んでいる人にぜひ知っていただきたいと思っています。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(オンライン取材:2022年7月)

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このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

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