乳房再建手術経験者の声

4人目の子どもの断乳から2か月後、乳腺炎になったときと明らかに違うしこりを発見

＊2024年10月発行　写真集『New Born -乳房再建の女神たち-』（撮影：蜷川実花、企画：NPO法人E-BeC、発行：赤々舎）に収録しているモデルの経験談「わたしのストーリー」より

東京都S.Mさん（39歳）

手術方式：一次二期再建（インプラント）、健側豊胸

・乳がん手術
2022年6月    右乳房全切除術＋エキスパンダー
執刀： 乳がん手術　がん・感染症センター　都立駒込病院乳腺外科　米倉利香先生（当時）
エキスパンダー挿入　同　形成再建外科　松永宣子先生（当時）

・豊胸術
2023年1月　左乳房豊胸

・乳房再建手術
2023年4月 　インプラント入れ替え（右）

・乳頭乳輪再建手術
2023年4月 　　インプラント入れ替え時に乳頭再建（皮弁立ち上げ）
2023年6月　　乳輪　タトゥー
執刀：がん・感染症センター　都立駒込病院形成再建外科　松永宣子先生（当時）

乳がん治療
術後治療：リュープリン5年　タモキシフェン10年

胸にしこりを見つけたのは、忘れもしない37歳の冬。4人目の子の断乳から2か月後のことでした。以前、乳腺炎になったときに感じたしこりとは明らかに違う、梅干しみたいなコリコリした固さに嫌な予感がし、翌日乳腺クリニックを受診しました。
予感は的中し、早期の乳がん。がんが散らばっている可能性があるため全摘をすすめます、と告知されたとき、まっさきに浮かんだのは、母の笑顔でした。

40歳直前に乳がんになり59歳で亡くなった母は、抗がん剤治療もしたけれど、いつも元気でにこにこしている、本当に強い人でした。「私も強い母親になりたい」。自分の心配よりも、子どもたちのために「前向きに頑張らなくては」という気持ちが勝りました。
母がインプラントで再建していたので、全摘への不安はなく、再発リスクを下げるために乳頭乳輪も取ることにしました。自家組織とで迷いましたが、術後、抱きついてきた子どもから胸とお腹の両方をガードするのは難しいことと、早く社会復帰したかったのでインプラントに決めました。

ところが、手術の直前になってコロナにかかってしまったんです。手術が6週間も延び、「しこりが大きくなったらどうしよう」と、あの時だけは本当に怖かった。そんな私を励ましてくれたのは、インスタでつながった同じ病気の方々でした。いつもたくさんの応援メッセージから勇気をもらい、本当に救われています。

母も乳がんだったので遺伝的なものに違いないと、遺伝カウンセリングを受けました。将来のリスクに備えて左胸を予防的に切除して再建しよう。もともとの胸が小さかったので、両方再建するなら憧れの大きい胸にしようと決めていました。ところが検査結果は陰性。結果は嬉しいものの、覚悟して決めたことなので、左胸は自費で豊胸し、Cカップを手に入れました。

再建によって、私は強い母であると同時に、「1人の女性としてもっと自信を持って生きたい。これまで後回しだった自分の人生も大切にして、チャレンジしよう」と思うようになり、まずは乳がんの経験を発信するYouTubeを始めました。メイクにも興味を持ち、苦手だった運動も始め、いつか自分のお店をもちたいという夢もできました。

この写真集の応募もチャレンジのひとつで、モデルに選ばれたとき、私はもちろん夫も子どもたちも大喜びしてくれました。
37歳の子育て真っただなかに乳がんになったことは、不幸だったかもしれないけれど、得られたものがとても多く、家族やSNSでつながった同病の方、手術に携わって下さった先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。そして今、自分の人生を生きていると心から実感できています。

2024年5月　インタビュー：山崎多賀子

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