「一人ひとりに合わせた“手作り”の再建」野平久仁彦医師
野平 久仁彦(のひら くにひこ) 蘇春堂形成外科 院長(札幌市)
術式 : インプラント、自家組織(下腹部穿通枝皮弁)
標準手術時間 : インプラント 約1時間半
自家組織 約8時間
標準入院日数 : インプラント 1日または外来手術
自家組織 8~9日間
乳頭・乳輪形成 : 実施は再建手術の3カ月以降が目安
※乳頭は局所皮弁または健側からの分割移植、乳輪は大腿内側基部
(脚の付け根部分)からの植皮または刺青(タトゥー)
理想とするのは“患者さんが温泉に行けるレベル
私が乳房再建手術と出会ったのは、1987年にアラバマ大学に留学したときのことです。アメリカではその5年前から「有茎腹直筋皮弁法」による手術方法が行われていました。私は顕微鏡を用いたマイクロサージャリーによる「遊離腹直筋皮弁法」をアメリカでも最初期に行い、多くの経験を重ねていきました。
帰国してすぐ室蘭の日鋼記念病院に着任。25年前のことですが、すでに乳房再建を希望する患者さんがたくさんおられ、私もすぐに手術を開始しました。腹直筋皮弁や遊離皮弁、インプラントによる乳房再建では、日本でも最も早くから多くの手術を手がけてきた一人だと思います。
昨今はメディアで乳房再建手術が取り上げられる機会も増えましたが、私は積極的な宣伝はしてきませんでした。なぜなら形成外科の手術は、個々の患者さんに合わせた“手作り”のもの。数多くの手術を行うより、一人ひとりの患者さんに質の高いものを提供することに力を注ぎたいと考えているからです。患者さんが人目を気にせず温泉に行けるようになるくらいのレベルの成果が提供できて、初めて乳房再建手術の意義もあるのだと思っています。
あふれる情報に翻弄されず、まず乳がんをしっかり治療すること
手術の方式は、何よりも患者さんの状況を総合的に勘案して判断します。本来の乳房が大きく下垂気味で、乳がん手術による乳房の欠損が大きい方には自家組織による再建が適していますが、日本人に多い乳房が比較的小ぶりで下垂も少なく、乳房を全摘出している場合は、私はティッシュエキスパンダーを使わず直接インプラントを入れる方法をよく用います。インプラントによる手術の7割はエキスパンダーを使わない方法で行っていますが、患者さんにとっても手術回数が少ない分、身体的負担や時間的拘束が少なくてすむという利点があります。
以前に比べると、乳房再建に関する情報もずいぶんたやすく集められる時代になりました。でもそのために、かえっていろいろな情報を自分に都合よく組み立ててしまう患者さんが増えたように感じます。名の知られた医師を次々と訪ね歩いている人も少なくありません。乳がんはあくまでも病気なのですから、まずは信頼関係の結べる乳腺外科の主治医に、責任をもってしっかりとがんを治療してもらうことが重要です。優れた乳腺外科医は、たいてい優れた形成外科医と連携していますから、必ず乳房再建までを見越したよい治療を行ってもらえるはずです。
また最近は、整容性の観点から美しい再建に対する高い意識を持つ若い医師たちが大勢頑張っており、乳房再建手術の草分けの一人として、私も大いに期待を寄せています。神様が創られた本物の乳房を作ることはできなくても、乳房をなくした患者さんたちの悲しみを少しでも和らげることができるように、私たち再建外科医も日々努力を重ねていきます。
(取材:2013年2月)
名称 | 蘇春堂形成外科 | ||
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所在地 | 060-0061 札幌市中央区南1条西4丁目 大手町ビル2F | ||
診察時間 | 月・火・木・金 ・土10:00~12:00(予約制)※2013年2月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 日・祝 | ||
TEL | 011-222-7681 | ||
URL | http://www.home-dr.jp/hosp_data/chuoh/soshundoh/index.html |