「いろんな方の声を聞いて、自分に合った乳房再建の術式を選択しました」
東京都 Y.Sさん(41歳)
手術方式:「一次二期再建」(穿通枝皮弁 乳がん手術と同時にティッシュエキスパンダーを挿入)
・乳がん手術:2011年9月 左乳房全切除とエキスパンダー挿入
執刀・聖路加国際病院 矢形 寛医師
・乳房再建手術:2012年6月 自家組織(穿通枝皮弁、ドナー=お腹)による再建
執刀・がん研有明病院 矢島和宜医師
※矢島医師は2014年3月末に蘇春堂形成外科(札幌市)へ異動されました。
・乳頭・乳輪の再建: 2013年1月 再建乳房の局所の皮膚を立ち上げる方法で乳頭を再建
近いうちにタトゥで乳輪を再建予定
術前治療:無治療(抗がん剤、放射線、ホルモン療法は行わず)
術後治療:同上
セカンドオピニオンを受け、納得して乳房を全切除
地元の検診センターで受けた乳がん検診で異常が見つかり、乳腺外科のある個人病院で精密検査を受けたところ、左乳房に非浸潤がんがあると診断されました。すぐにその病院の医師から聖路加国際病院の矢形寛先生をご紹介いただき、治療をおまかせすることにしました。
じつは乳頭・乳輪までも含めた左乳房全切除を宣告されたときに、非浸潤なのにどうして全切除せねばならないのか納得できず、再度、地元の個人病院の先生に戻ってセカンドオピニオンを受けた経緯があります。結局、私の場合は左乳房全面に石灰化が広がっていたため全切除はやむを得ないとの説明を2時間にわたり受け、私自身も納得ができましたので、2011年に左側全切除の手術を受けました。
エキスパンダーの異物感が自分には合わず、積極的に情報を収集
その時点ではとにかく乳がん治療のことで頭が一杯で、再建については深く考える余裕がありませんでした。しかし聖路加国際病院では、“乳房再建までが乳がんの治療”という方針をとっていましたので、自然の流れとして、乳がん手術と同時に再建を前提とするエキスパンダーの挿入を受けました。
聖路加国際病院では、再建手術の9割がインプラントの術式をとっています。私自身も最初はそのつもりでいましたが、エキスパンダーを入れた当初から異物感がずっと気になっていたうえ、痛みや痒みも伴い、1日の仕事の疲れが胸に集中してくるような感覚があって、私には合わないのではないかと思うようになりました。エキスパンダーの挿入期間中は物事を考える時間の余裕もありますので、本当にインプラントでいいのか自分自身で再度確認してみることにしました。
再建経験者のブログを見たり、患者会やセミナーに出席して再建経験者や再建医の生の声を聞いたり、さらには講演を聞いた再建医の診察を受けに行くなどして積極的に情報収集を行い、消去法で出した結論は自家組織による再建手術でした。私自身ヘルニアの持病を抱えていましたので、背筋や腹筋を使う筋皮弁の再建は腰への負担が大きいと考え、お腹の脂肪をドナーにした再建を選択しました。
こうして、主治医にもご理解いただき、情報収集期間中に実際に診察を受けた医師の一人でもある、がん研有明病院の矢島和宜先生に再建をしていただくことにしました。 手術の半年後には乳頭をつくっていただきましたが、乳輪は近々タトゥーでつくっていただく予定です。
患者や医師の生の声を聞くことでベストな結論が導かれる
再建手術から約半年が経過した現在、もちろんお腹の傷跡はまだ残っていますが、不具合を感じることなく快適な日常生活を送っています。服飾関係という仕事柄、大きな段ボールを上げ下げしなければならないこともあり、とくに手術直後は少々きつく感じることもありましたが、いま思うと、そうした運動はいいリハビリになっていたと思います。そして何より、罹患前の下着を再び着用できるようになったことをしみじみ幸せに感じています。
現在、治療に向き合っている方々にお伝えしたいのは、病気のことで頭がいっぱいになっているときこそ家に引きこもらず、経験者の生の声を聞く機会を持ってほしいということです。再建した胸を見せてもらったり、今のいきいきとしたライフスタイルをうかがう機会を通じて、きっとご自分の明るい未来の姿を見ることができるはずです。
*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。
(取材:2013年1月)