「どこに住んでいても乳房再建が受けられる環境を作りたい」渡部聡子医師
渡部聡子(わたなべさとこ) 河田外科形成外科(常勤)、岡山中央病院(毎月第1、3、5月曜 要予約)
術式 : インプラント、自家組織(広背筋皮弁)
標準手術時間 : ティッシュエキスパンダー挿入 2時間以内、インプラント 2時間以内
広背筋皮弁 4~5時間
標準入院日数 : ティッシュエキスパンダー挿入 4~5日間、インプラント 4~5日間
広背筋皮弁 9~10日間
乳頭・乳輪形成 : 再建手術の3~6カ月後が目安
※乳頭は健側からの移植または皮弁の立ち上げ。乳輪は大腿基部からの植皮またはタトゥー
一度の手術で乳がん切除から再建まで行う一次再建が大多数
2021年4月に岡山大学病院から河田外科形成外科に異動し、岡山大学病院は現在、外来のみで手術は行っていません。
岡山大学病院時代は乳腺外科と形成外科の連携が取れているため、乳がんの手術前に再建について話を聞きに来られる患者さんがたくさんいました。手術はシリコンインプラントによる再建、お腹の脂肪をドナーとした穿通枝皮弁による再建、広背筋皮弁による再建方法についてご説明し、費用的な面、異物に対する抵抗感、そしてできるだけ少ない手術回数で再建したいということから、穿通枝皮弁による一次的一期再建を選ばれる患者さんが圧倒的に多かったです。
穿通枝皮弁による一次的一期再建は、乳腺外科医が乳がんを切除した後、ひき続いて形成外科医が穿通枝皮弁による乳房再建を行います。ただ、乳がんの切除方法によっては、胸の皮膚が足りず、お腹の皮膚を胸に植皮しなければいけない場合もあります。事前にご説明して、お胸がパッチワークのようになるのが嫌だと言われる方には、まずティッシュエキスパンダーを挿入して皮膚を伸ばし、改めて穿通枝皮弁による乳房再建を行う一次的二期再建を行っていました。
中四国エリアでは、穿通枝皮弁による乳房再建ができる施設がそう多くないため、他の病院で乳がんの手術をされた患者さんも県外から来てくださっていました。
現在は、乳頭乳輪再建を河田外科形成外科で、インプラントおよび自家組織による再建を入院可能な岡山中央病院で行っており、自家組織は全摘後あるいは温存後の広背筋皮弁による一次再建と二次再建を行っています。
手術までにお会いできる機会を1回でも多く作りたい
岡山大学病院時代から変わらず思っているのは、納得のいく乳房再建を受けていただくには、医師と患者がじっくり話し合う時間が必要ということです。何が一番大切なのか・・・例えば左右対称のバストにこだわりたい、仕事や家庭に支障のないよう再建したい、柔らかくて自然なバストにしたいなど、ご自分の中の優先順位をなんとなくでもいいので決めてみてください。それをもとに医師と患者が話し合うことができれば、その方にとってベストな術式を選択しやすくなります。患者さんとしっかり意思疎通できるよう、手術までにお会いできる機会を1回でも多く作りたいと考えています。
患者さんのQOLを高める乳房再建は、形成外科医として一番力を発揮できる分野だと感じています。病気後の長い人生を歩まれる中で、乳房再建が心のかせを取り除くきっかけになってくれると嬉しいです。
どこに住んでいても乳房再建が受けられるように!
私たち形成外科医は技術を向上させ、どこに住んでいても標準的な乳房再建が受けられる環境を作って行かなければいけないと感じています。
また地方だからかもしれませんが、再建手術の存在をご存知ない方はまだ多くいらっしゃいます。乳腺外科と形成外科の連携がこれからもっと進んでいくよう、形成外科医としてどう動いていくかは、今後の大きな課題です。
(2013年4月3日取材 2021年5月14日更新)
名称 | 河田外科形成外科 | ||
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所在地 | 〒700-0903 岡山市北区幸町4-12 | ||
診察時間 | 9:00~11:30(受付8:30~) ※渡部医師の診察は木曜日 ※2021年5月現在の情報です。受診される際は病院にご確認ください。 | ||
休診日 | 毎週木曜日、第2、4日曜日、祝日、振替休日 | ||
TEL | 086-225-2500(代表) | ||
URL | https://www.kawada-keisei.gr.jp/ |