「乳房再建手術は乳がん経験者の明るい未来を広げてくれます!」
北海道 IYさん(41歳)
手術方式:「二次一期再建」
(インプラント。乳がん手術から時間をおいてエキスパンダーを使わずに再建)
・乳がん手術 : 2004年12月 右乳房全摘出(乳頭乳輪も切除)
2012年1月 左乳房全摘出(乳頭乳輪も切除)
手術・KKR札幌医療センター
・乳房再建手術 : 2005年10月 シリコンインプラントの挿入
2012年12月 シリコンインプラントの挿入
執刀・蘇春堂形成外科 野平久仁彦医師
・乳頭乳輪の再建 : 右胸=2006年4月左胸=2013年5月。鼠径部の皮膚の移植 右側の乳頭乳輪もこのとき同時に作り直す
術前治療 : なし
術後治療 : 1回目=抗がん剤、ホルモン療法(約1年)
2回目=抗がん剤(FEC、ドセタキセル)
HER2陽性のためハーセプチン(約1年)、ホルモン療法はなし
先に乳房再建手術を受けていた友人の一言に動かされて
最初の乳がん手術は2004年の12月。ときどき胸がきゅーっと痛むことがあり、生理前だからかと思っていたのですが、横になって触ってみると明らかにしこりを感じたので、急いで地元の大きな病院を訪ねました。乳がんと診断され、すぐ右乳房を全切除。リンパ節の切除も伴う手術でしたが、娘がまだ2歳になったばかりのころで、母に子どもの面倒をみてもらいながら、がんばって治療に専念しました。
当時、乳房再建はほとんど一般に知られてはいませんでした。私が病気になる1年ほど前に同級生が乳がんの手術を受けていたのを思い出し、様子をきいてみようとたまたま電話をして、初めて彼女が乳房再建手術というものを受けていたことを知ったのでした。
「子どもと一緒に温泉にも行きたいじゃない!」という彼女の言葉にも大いに気持ちを動かされ、外科の主治医に乳房再建について尋ねてみたのですが、「それよりまず身体をきちんと治しましょう」とおっしゃるばかりで、再建手術のことは何ひとつ教えてもらうことができません。結局、その友人に紹介される形で訪ねたのが蘇春堂形成外科の野平久仁彦先生でした。
再建してこそわかるさまざまな喜びがあります
それから6~7年が経過して、今度は左側にも乳がんが見つかりました。右胸のときと同じような痛みが出るようになり、しこりも感じられたのですが、マンモグラフィに映らず、触診と超音波と細胞診で乳がんとわかりました。
今回も再建するつもりでしたから、乳がん手術前に野平先生に相談すると、「左側も全摘にしたほうが、左右のバランスが整ったきれいな再建ができますよ」とのアドバイスです。母にも「温存して再発を心配するより全摘にしたら?」と言われ、2012年の1月に迷うことなく全摘手術を受け、同じ年の暮れに野平先生のもとで再建手術を受けました。
左右同じ方法で再建してみてわかったのは、体の左右バランスがとてもいいことです。娘も小学校6年生になりましたが、ほかのお母さんたちと同じように、人の目を気にせず娘を連れてプールに行けるのも本当に嬉しいことです。再建前に一度温泉旅行にチャレンジしたことがあるのですが、実際以上に周囲の目が気になるもの。タオルでしっかり胸を隠して入るのと、堂々と入れることの違いがどれほど大きいか、再建を経験してみると本当によくわかります。
迷っている人も怖がらずに。明るい未来が待っています
私の家族は、父方の祖母と叔母がともに乳がんを経験、父と妹も別のがんで他界するという、いわゆる“がん家系”なので、いつかは自分も・・・という思いが常にあったせいか、いざ乳がんの告知を受けたときはそれほど驚くこともなく、淡々と受け止めて治療と向き合うことができました。乳房再建手術も、信頼できる医師の執刀で落ち着いた気持ちで受けることができましたし、これも再建手術のことを教えてくれた友人のおかげだと感謝しながら毎日を生きています。
ひとつ心配なのは、これから思春期に向かう娘ががん体質を受け継いでいるかどうかです。でも、医師も「遺伝の可能性は否定できないけれど、これからは保険の範囲でいい乳房再建手術が受けられるようになりますから、いずれ遺伝について検査しておいてもいいのでは?」と言ってくださっています。その結果もし遺伝があっても、気持ちの上で備えておくことができれば娘の人生もきっと良い方向に変えていけるものと思います。そしていま再建を迷っている方も、怖がらずにぜひ手術を受けることに前向きになってほしいと願っています。そうすることで、ずいぶん明るい未来が広がるのですから!
*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。
(取材:2013年9月)