• 公開日2014.06.21
  • 最終更新日 2024.01.17

「インプラントと脂肪幹細胞を併用する方法で乳房を再建しました」

神奈川県 TJさん(50歳)

手術方式 : 「一次二期再建」(シリコンインプラントと脂肪幹細胞で再建)
・乳がん手術 : 2010年6月 右乳房皮下乳腺全摘、エキスパンダー挿入
執刀・横浜市立大学附属市民総合医療センター 石川孝医師
(現在は東京医科大学病院乳腺科に勤務)
・乳房再建手術 : 2011年1月 インプラント挿入と脂肪幹細胞の併用で再建
(再建と当時に健側を豊胸)
2012年3月 修正のため少量の脂肪幹細胞を追加注入(日帰り手術)
執刀・横浜市立大学附属市民総合医療センター 佐武利彦医師
術前治療 : なし
術後治療 : ホルモン剤(リュープリン3年間 ノルバデックス5年間)

インプラントによる再建手術をより美しく――

2008年の春ごろ、右乳房に小さなしこりを感じ、かかりつけのクリニックで受けた細胞診でクラス2(異型細胞はあるが悪性ではない)と診断されました。4カ月後に再び超音波診と細胞診を受けたところ、腫瘍が若干大きくなっており、クラス3(疑わしいが悪性と断定はできない)との診断です。より詳しく検査するために紹介された大学病院でもがん細胞は発見されず、さらに半年後に受けた超音波診でまた少し大きくなっているとわかったため、太い針でそれまでの3倍量をとって再検査。2010年2月に乳がんとの告知を受けました。

転移はなかったものの、腫瘍が乳頭のすぐ内側にあるため部分切除はできず、「全摘しましょう」とのこと。とても小さながんなのに・・・と首をかしげる私に、主治医の石川先生は「美容より命が大事」とおっしゃり、すぐに同じ病院の形成外科で乳房再建手術を手がける佐武先生のところに話をつないでくださったのでした。

佐武先生は自家組織を使った乳房再建の名手として知られる方ですが、仕事を持つ私は、入院期間が短いインプラントによる再建を希望していました。当時、佐武先生は別のクリニックでも手術を手がけておられ、そこでなら脂肪幹細胞注入を併用したインプラントでの再建ができるとのお話です。「きれいに作ってあげられるから」という言葉に、この方法での再建を決意しました。

脂肪採取部分の傷も小さく、とてもきれいな乳房を再建していただきました

脂肪の採取場所は、両鼠蹊(そけい)部とお尻のすぐ下、および腰の両脇の計6カ所。ここから管を差し入れて水を注入し、脂肪と一緒に吸い出して幹細胞だけを分離し、インプラントを入れた胸元に注射器で注入していくという方法です。あとで知ったのですが、当日は脂肪採取の専門家をはじめ全国から、佐武先生いわく「あり得ないほどの顔ぶれ」のお医者さまが手術室に集まっておられたそうで、それほど例のない手術だったようです。

手術と入院は1泊2日。ただ術前に十分な説明は受けて納得はしていたのですが、手術後1週間ほどは首から下の全身がひどい筋肉痛のように痛むのです。傷はどれも1針縫う程度の小さなものなのですが、しばらくは両足がぱんぱんに腫れ、腫れがひくまで腹帯と弾性ストッキングで下半身を常に締めつけているので、身動きも自由になりません。この時期がやはり少し辛かったですね。

でも術後の胸を初めてみたときは、きれいな両胸が揃っていてほんとうに嬉しかったです。術後のホルモン治療の影響で乳腺が委縮し、左乳房もかなり小さくなってしまったので、右乳房の再建と同時に左もインプラントで豊胸。結果として、とても満足のいく手術をしていただくことができました。デコルテの部分もとてもなめらかで、見た目を何ひとつ気にせずスポーツジムやプールに行けるのが楽しくてなりません。

脂肪幹細胞を使う手術は必ずしも一般的なものではありませんが、脂肪採取直後の痛みを除けば身体に残る傷も小さく、出来上がりの満足度はとても高いと思います。私のように痩せ型で、自家組織での再建に十分な組織が採取できない人にも、こうしたインプラントとの組み合わせによる方法があることも知っておいていただくといいのではないでしょうか。

*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。

(取材:2014年6月1日)

→手術経験者一覧へ

《脂肪幹細胞を併用する乳房再建》
シリコンインプラントを使った乳房再建では、胸元にへこみができたり、インプラントの境目に段差や細かいしわが生じたりすることがあります。この凸凹をなめらかにするため、自分の体から脂肪細胞を採取して注入する方法が補助的にとられることがあります。ここでご紹介した方法は、採取した脂肪組織のなかから将来脂肪細胞に成長する「幹細胞」だけを特殊な器械で分離し、脂肪組織とまぜて再建部分に注入するもので、脂肪細胞だけを注入するより身体への定着率が高いなどの利点が多いのが特徴です。ただし日本でもまだ限られた施設でしか行われていません。

このサイトは、医療に関するコンテンツを掲載しています。乳がんや乳房再建手術に関する各種情報や患者さん・医療関係者の談話なども含まれていますが、その内容がすべての方にあてはまるというわけではありません。 治療や手術の方針・方法などについては、主治医と十分に相談をしてください。

E-BeCを支援するE-BeCを支援する

今、不安の真っただ中にいる患者さんに希望を。
あなたのご支援がE-BeCの活動を支えています。

有料個別相談をご希望の方へ有料個別相談をご希望の方へ

あなたはひとりじゃない。
ひとりで悩まず、一緒に考えていきましょう。

メールマガジンの登録はこちらメールマガジンの登録はこちら

E-BeCから乳房再建や乳がんに関する役立ち情報、
セミナーのご案内をいち早くお届けします。

ページトップへ