「乳房再建手術を知らなかったら、いまの私の笑顔はなかったでしょう」
大阪府 IKさん(61歳)
手術方式 : 「二次二期再建」
(乳がん手術から時間をおいてエキスパンダーとインプラントで再建)
・乳がん手術 : 2003年10月 右乳房温存手術
手術・大阪府立成人病センター
・乳房再建手術 : 2003年12月 エキスパンダー挿入
2004年6月 インプラントに入れ替えて再建を完了
執刀・メガクリニック 高柳 進医師
術前治療 : なし
術後治療 : なし
乳がん治療について情報を集めるなかで知った「乳房再建」という言葉
乳房再建手術を受けたのはもう10年以上も前のことになります。たまたま自己触診でしこりを発見。仕事の多忙さや紹介された医師の都合などで、かれこれ2カ月近くも精密検査が受けられずにいるあいだ、インターネットで乳がんの情報を集めていたとき、初めて「乳房再建」という言葉と出会ったのでした。
乳がんについては、細胞診では悪性ではないといわれ、1カ月ほどして乳頭から出血がみられてもまだはっきりしません。再度の検査をお願いして悪性と判明したときには、がんは乳腺を伝って10cm以上も広がっていました。全摘するしかないといわれ、もっと早くわかっていたら・・・という思いはありましたが、再建という知識だけはあったので、再建手術の受けられる病院を見つけておこうとすぐ情報を集めはじめました。
再建経験者に話が聞けるかもしれないと思って患者会にも行ってみましたが、そうした方は見つからず、インターネットにも十分な情報がないので、アメリカやカナダのウェブサイトで症例をみたりもしました。どうにかネットで見つけた病院を何カ所か回るうちに、この方にぜひお願いしたいと思ったのがメガクリニックの高柳先生でした。
インプラントを入れて10年間。何のトラブルもありません
先生には色々な術式を示していただきましたが、仕事が忙しく、ひとり娘もまだ学生でしたので、入院期間が短くてすむインプラントでの再建を選択。10月に乳がん手術を受け、12月にティッシュエキスパンダーを挿入しました。乳腺外科の主治医には「再建まで3カ月は待ったほうが」と言われましたが、高柳先生は問題なしと判断され、半年後にはインプラントへの入れ替えを完了。クリニックの近くのホテルに1泊し、翌朝診察を受けた足で帰宅。翌日からはもう出勤していました。
右乳房を失っていた2カ月間、あるはずのものがないという喪失感はほんとうに大きなものでした。生活に不自由はないけれども、女性として初めて味わったあの感覚だけはいまも忘れることができません。それだけに新しい胸ができたときは嬉しくて、乳がん患者に再建は必須のものだと痛感。たとえ余命がいくらもないと宣告されても、私は女性として絶対に乳房再建の道を選んでいたと思います。
インプラントを入れて10年が経過しますが、これまで一度も問題に感じたことはありません。10年経てば入れ替えも視野に入れたほうが・・・などと聞きますが、定期検診でもいまのところその必要はないとのことで、特別なメンテナンスは受けていません。加齢によって左右バランスが変わってきても、それはまたそのとき考えればいいのですから。
再建したことで、乳がんだったことを忘れて暮らしている私がいます
それよりも両方の乳房がそろった状態で普通に生活できることが、私は何より嬉しいのです。再建したことで、乳がんだったことをすっかり忘れて暮らしていられます。古くからの友人たちとも毎年一緒に温泉旅行を楽しんでいますし、仕事もプライベートも、好きなことに打ち込み頑張ることができます。
実は3年前、脳に動脈瘤がみつかり、あと1カ月発見が遅かったら命の保証はなかったと告げられました。ふだんは風邪もひかない私が2度も大きな病気を乗り越え、こうして自分のことを皆さんにお聞かせする立場にいることの不思議さつくづく感じずにいられません。再建をしていなかったら、今日のこの笑顔があったかどうか・・・。その意味で、私は高柳先生には二度目の人生を与えていただいたのだと思っています。
*インタビュー記事は個人の体験談に基づく感想で、E-BeCで推奨するものではありません。体験談は再建を考える際の参考にしていただき、主治医や医療者とよく相談をして決めるようにしてください。
(取材2014年7月)